道端で拾う自然の恵み 自己肯定感につながるセルフケア
日常の中に自然の恵みを見つける
多忙な日々の中で、心身ともに疲弊を感じることは少なくありません。そんな時、心を軽くし、自分自身をいたわる時間を持つことは非常に大切です。都会やその近郊で生活していると、広大な自然に触れる機会は限られると感じがちですが、実は私たちのすぐそばにも、たくさんの自然の恵みが存在しています。
今回は、道端や公園の片隅で見つけることができる身近な自然物を「拾う」という行為を通じて、手軽にできるセルフケアと、それがどのように自己肯定感に繋がるのかについてご紹介します。特別な場所やまとまった時間は必要ありません。いつもの散歩コースや通勤・帰宅の道のりで、少しだけ意識を向けてみませんか。
「拾う」セルフケアの実践方法
身近な自然物を拾うセルフケアは、非常にシンプルでどなたでもすぐに始められます。
- 歩く場所を選ぶ: 近所の公園、河川敷、街路樹のある道、少し足を延ばした自然豊かな場所など、無理なく行ける場所を選びます。
- 意識を向ける: いつもなら見過ごしてしまう足元や道の脇に、意識的に目を向けます。アスファルトの隙間から顔を出す草花、落ち葉、木の実、石など、様々な自然の要素があることに気づくでしょう。
- 「ピンとくるもの」を見つける: 形や色、感触など、なぜか心惹かれるものを探します。それは完璧な形である必要はありません。少し欠けていたり、変色していたりしても、自分が「良いな」と感じるものを選んでみましょう。
- 丁寧に拾い上げる: 見つけた自然物を、感謝の気持ちを持って丁寧に拾い上げます。この時、周囲の安全や環境に配慮し、取るべきではないもの(植え込みの中の植物本体など)には手を触れないようにします。
- 持ち帰る: 拾ったものは、ポケットや小さな袋に入れて持ち帰ります。
- 家で活用する: 持ち帰った自然物を、様々な方法で活用します。
- じっくり観察する: 形、色、模様、手触りなどを時間をかけて観察します。拡大鏡などを使っても新たな発見があるかもしれません。
- 飾る: 小さな瓶に入れたり、お皿に並べたり、本棚やデスクの片隅に飾ったりします。
- 記録する: ノートに貼り付けたり、写真に撮ったりして記録します。見つけた場所や日付、感じたことなどを書き添えるのも良いでしょう。
- 触れる: 疲れた時に手に取って触れてみます。自然物の感触は心を落ち着かせてくれます。
- 組み合わせる: いくつか組み合わせて小さなオブジェを作ったり、絵のモチーフにしたりと、創造性を発揮するのも効果的です。
この一連のプロセスは、数分でも行うことができます。通勤中の少しの寄り道や、休憩時間の散歩で試してみてください。
なぜ自然物を拾うことが自己肯定感につながるのか
単に自然物を拾うという行為が、なぜ心身のケア、そして自己肯定感の向上に繋がるのでしょうか。これにはいくつかの理由があります。
- 「見つける」ことによる小さな成功体験: 普段見過ごしているものの中から、自分の「好き」や「良いな」と感じるものを見つけ出す行為は、小さな宝探しのようなものです。何かを見つけ出すたびに得られる達成感や喜びは、「自分は価値あるものを見つけられる」という感覚に繋がり、自己肯定感を育みます。
- 「選ぶ」ことによる自己信頼: たくさんあるものの中から、自分の感覚だけを頼りに一つを選ぶ行為は、自分の内なる声や感性を信頼する練習になります。「自分が良いと思ったものを選んで良いんだ」という許容は、自分自身を肯定することに繋がります。
- 五感の活性化と集中: 自然物を探す、拾い上げる、観察するというプロセスは、視覚、触覚などを強く刺激します。日常の思考から離れ、目の前の自然物に集中する時間は、マインドフルネスの状態に近く、心を穏やかにし、集中力を高める効果が期待できます。この「今、ここ」に集中する感覚は、過去の後悔や未来の不安から心を解放し、自己受容を促します。
- 自然との繋がりを感じる安心感: 自然の一部である植物や石、水に触れることは、人間が本能的に持っている自然との繋がりへの欲求を満たします(バイオフィリア仮説などでも論じられています)。この繋がりを感じることで得られる安心感やリラックス効果は、ストレスで硬くなった心を和らげ、自分を否定しがちな思考から抜け出す手助けとなります。
- 自分だけの「特別」を育む: 持ち帰った自然物は、自分だけが見つけ、選んだ、特別なものです。それを大切に扱ったり、飾ったり、記録したりする行為は、「自分にとって価値のあるもの」を自分で生み出す創造的なプロセスであり、自分自身の価値を再認識する機会となります。
体験談:道端の石が教えてくれたこと
私自身、以前は仕事に追われ、自分の感情や状態に気づく余裕がありませんでした。ある日、公園を歩いているときに、ふと足元に転がる一つの石に目が留まりました。特別な石ではありませんでしたが、その丸い形と、雨に濡れて少し色が変わっている様子が美しいと感じ、ポケットに入れて持ち帰りました。
家に帰り、デスクの片隅にその石を置きました。忙しい合間にその石を見るたび、公園で見つけた時の穏やかな気持ちが蘇りました。それ以来、散歩中に「良いな」と感じる石や葉っぱをいくつか拾って帰るようになりました。
拾った自然物を小さな箱に入れて、時々眺めるようになりました。一つ一つには、見つけた時の天気や、その時に感じた自分の気持ちが紐づいているような気がしました。それはまるで、自分の心の状態を記録した宝物のように感じられました。
この小さな習慣を続けるうちに、「こんな美しいものを見つける感性が自分にはあるんだ」「忙しい中でも、自分の『良い』と思うものを見つけられるんだ」と、少しずつ自分自身を肯定的に捉えられるようになったのです。特別なことではないけれど、自分だけの密やかな楽しみを持つことが、心の安定に繋がることを実感しました。
今日からできること
今いる場所から、窓の外の景色を眺めてみたり、休憩時間に少しだけ外に出て深呼吸をしてみたりするだけでも、自然との繋がりを感じる第一歩になります。
そして、もし機会があれば、通勤や散歩の途中で、足元に意識を向けてみてください。きっと、小さな自然の恵みが見つかるはずです。ピンとくるものがあれば、一つ拾って持ち帰ってみてください。
その小さな自然物は、忙しいあなたに寄り添い、心を休ませ、そして「価値あるものを見つけられる」自分自身を再発見するきっかけを与えてくれるかもしれません。あなたのペースで、日常に自然の恵みを取り入れてみてください。